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化学の視点で社会を見て、疑問に思ったことをまとめていきます。

アドレナリン&ノルアドレナリン、出てませんか?!

イライラする。そんなとき…

いろんな感情が湧き上がること、ありますよね。

私も、今日は仕事で同僚に無責任な発言をされて、大変イライラしました。


そんなとき、私たちの脳内では、アドレナリンやノルアドレナリンなどの物質が盛んに分泌されます。


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画像は、wikipediaアドレナリンノルアドレナリンのページからお借りしました。


これらの物質は、下に示すようなカテコール基をもち、更に他の部分に-(NH)-のアミノ基をもつため、カテコールアミン系化合物と呼ばれます。

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イライラしながらこんなことを考えていたら、なんか妙に落ち着いちゃいましたね。

ストレスが最も体に良くないという医者も多いので、やっぱりイライラをためないのは大事なことかな、と思います。

イライラを抑えるには

イライラした気持ちを抑えるには、リラックスするのが一番。

ですが、実はリラックスするには脳内にセロトニンを増やすといいみたいですね。

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セロトニンは、体内で普段から作っている物質ですが、材料がなくては作れません。

その材料となるのが、必須アミノ酸であるトリプトファン

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トリプトファンをきちんと摂取していくと、自然とセロトニンが作られるので、イライラしてもリラックスした状態を取り戻しやすくなります。

比較的多くトリプトファンを含むのはカツオやチーズなどなので、そういったものを日常的に摂っていくといいですね。

ただし、要注意なのはタンパク質の摂りすぎです。

トリプトファン以外のアミノ酸も、トリプトファンと同じ経路で脳へと運ばれますので、あまりアミノ酸が多いと、運搬が間に合わず脳内で十分にセロトニンが合成されません。



でも、私にとってはこんな考え事が一番のリラックス材料かもしれませんね。

『「レッドブル」の飲みすぎで男性死亡』記事の矛盾と不思議。

Techinsightに掲載された記事

元の記事はこちら

japan.techinsight.jp

特に引っかかった部分を以下に引用すると、

『now8news.com』が報じているところによれば、ホセさんは「ここ18時間で、24オンス缶(710ml)入りのレッドブルを24本飲んでしまった」と打ち明けていたもよう。レッドブルたった1本でもコーラ7本分に相当する240mgものカフェインを摂ることになると言われ、合成添加物も相当量入っている。

という部分や

こちらでは少し前、北アイルランド・アントリム州在住のレーナ・ルパリさん(26)が毎日平均28缶、3000kcal以上というレッドブルを飲み続けていた結果、「特発性頭蓋内圧亢進症」を発症し、ひどい頭痛や耳鳴りの末に視力を失いかけたというニュースをお伝えしていた。

という部分が特に引っかかる。 今回の内容では、カフェインの過剰摂取による健康被害が中心になると思われるので、少し調べてみた。

カフェインの安全性

化合物として販売されている物質には、基本的にMSDS(化合物安全性データシート)という文書が公開されている。

これは、その物質の安全性について、製造するメーカーが安全性について調査したもので、今回のカフェインについては純正化学株式会社が製造しているため、検索すると簡単に出てきた。

MSDSはこちら → http://junsei.ehost.jp/productsearch/msds/24015jis.pdf

経口摂取についての危険性については、5ページ目にある「11, 有害性情報」の中に以下のような記載がある。

List1の文献においてラットのデータが12件(261-383、200-400、192、483、233、355、247、344、421、700、50-500、261-383 mg/kg) あり、そのLD50が区分3に相当するものが7件、区分4に該当するものが5件であったことから(SIDS, Access on Sep. 2008)区分3とした。

データによって違いがあるので、危険性の区分3にするのが妥当だろうということのようですね。

さて、区分3というのは一体何のことなのでしょうか。「LD50 区分3」と検索すると、次の文書が出てきました。→ こちら

開くと、6ページに急性毒性についての区分が示されており、経口摂取の区分3とは体重1kgあたり300mgのようですね。

ということは、体重60kgの成人の場合では、急性毒性を示し、半数の人が亡くなる量というのが300mg/kg × 60kg=18000mgということになりますね。

今回のケースについて

ところで、今回のケースについての摂取量はどの程度だったのでしょう?

記事の内容によると、『18時間で、24オンス缶(710ml)入りのレッドブルを24本飲んでしまった』とのことですね。

18時間というタイムラグが気になりますが、急性毒性による被害とみて、その分量を計算してみると、レッドブルが710mL×24缶 = 17040mL ということになります。

レッドブルの公式情報によると、レッドブル250mLに、80mgのカフェインが含まれているそうですので、今回の摂取量は17040mL ÷ 250mL × 80mg = 5452.8mg という計算になります。

今回亡くなったホセさんの体重がわかりませんので、LD50の値は正確にはわかりませんが、体重60kgとすると18000mg摂取で半分の確率で亡くなるのに対し、5500mg程度摂取していますので、かなり多いという印象ですね。

記事の記述の不思議。

なぜか、Techinsightの記事では『合成添加物も相当量入っている』などとついでにディスられています。

今回計算してわかったように、そもそもカフェインの過剰摂取が危険なレベルに達していたことはわかります。

他のものの影響があるなら、それらもきちんと検証していかないといけないのではないでしょうか。